長野県松本市で「家族信託」や「遺言書」、「任意後見」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
当事務所が業務提携しているトリニティ・テクノロジー株式会社の運営する家族信託Web「スマート家族信託」コラムなどを参考に、家族信託について考えていきます。
○トリニティ・テクノロジー株式会社Web↓
前回のブログでは「不動産を信託財産にした場合のメリット・デメリット」をご紹介しました。
今回は「不動産を信託財産にした場合」の「不動産の売却手続き」と「不動産にかかる税金」について考えていきます。
家族信託した不動産を売却するには?
家族信託した不動産を売却することはもちろん可能ですが、どのような手続きを行うことになるのでしょうか。
信託財産である不動産を売却する場合、売買契約を締結するときの契約者は、「受託者」となります。
不動産を信託財産とした場合、不動産の所有権は形式的には「受託者」に移り、受託者が不動産の所有者となるからです。
そのため、売主は、不動産の実質的なオーナーである「委託者(兼受益者)」ではなく、「受託者」になります。
不動産の売買による所有権移転の登記をする際も、売主の「実印」「印鑑証明書」「登記識別情報(権利証)」が必要となりますが、これも「委託者」のものではなく、「受託者」のものを要します(信託をする際には、受託者の登記識別情報(権利証)が発行されます。)。
売買契約の売主としての役割は、完全に「受託者」になるのです。
なお、信託不動産の売買について、不動産仲介業者に仲介を依頼する場合、特別な手続きは必要ありません。
通常の不動産の売買の場合と同じように、受託者が売主として不動産仲介業者に仲介を依頼することができます。
信託財産だからと言って、特に売買代金が下落するなどの影響があるということもありません。
不動産信託で発生する税金とは?
家族信託で不動産を信託財産とする場合、どのような税金がかかるでしょうか。
1)受益者にかかる税金
①贈与税
受益者と委託者が同一人である場合には、基本的には贈与税はかかりませんが、受益者と委託者が別の人の場合には、委託者から受益者への贈与があったとみなされ、贈与税が課税される可能性があります。
※受益者と委託者が同一人である場合にも贈与税が課税される場合があります。実際に家族信託を行うときは、税務上の問題がないか、専門家に確認しておく方が無難です。
②相続税
信託契約の際、委託者兼受益者が死亡した場合、受益者の地位を相続する相続人を決めているケースが多いと思います。
相続が発生した場合、信託契約で定めた受益者の地位を引き継ぐ新たな受益者に対して、相続税がかかります。
③譲渡所得税
信託受益権(信託財産から利益を受ける受益者の権利)は売買することができます。
(信託契約の中で受益権の売買を制限することも可能です。)
受益者が信託受益権を売却した場合、売却したことにより発生した利益に対して譲渡所得税がかかります。
④所得税・住民税
信託財産の不動産を賃貸している場合、賃貸収入が不動産所得となり、それに対する所得税・住民税がかかります。
2)受託者にかかる税金
①登録免許税
不動産を信託財産にすると、その不動産について信託による所有権移転及び信託の登記を行う必要が生じます。そして、信託の登記には登録免許税がかかります。
信託を終了する場合にも、信託不動産を受託者から引き継ぐ人への所有権移転登記が必要となり、登録免許税がかかります。(通常、この登録免許税は不動産を引き継ぐ人が負担します)
なお、信託の終了により委託者兼受益者に所有権を戻す場合には、登録免許税はかかりません。
②固定資産税
不動産を所有している人には毎年固定資産税が課税されます。
不動産を信託財産にしている場合、形式的な所有者は受託者となるため、受託者に対し固定資産税がかかります。
ただし、受託者は自分の財布から固定資産税を負担するのではなく、信託によって預かっている金銭から固定資産税を支払うことができます。
不動産を取得した場合には通常不動産取得税がかかりますが、受託者に不動産の所有権を移転した場合には、受託者は実質的な所有権を取得したわけではないため、不動産取得税はかかりません。
3)委託者にかかる税金
家族信託で不動産を信託財産する場合、委託者にかかる税金は特にありません。
委託者兼受益者である場合には、受益者としての税金がかかります。
まとめ
「家族信託と不動産」について3回にわたって考えてきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回の後半、「税金」の部分では、「委託者」や「受益者」、「受託者」などの専門用語が飛び出してきたので少々分かりにくかったかもしれませんね。
そこで改めて「家族信託とはなんぞや」ということで、家族信託のしくみを簡単に説明した動画(約7分)がありますのでご覧ください↓
家族信託は比較的新しい制度であるため、たとえ法務系士業(弁護士、行政書士、行政書士)や税理士といった士業であっても、制度に詳しい士業は極めて少なくいため、実績のある専門家にご相談することをお勧めしています。
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