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  • takizawa62

家族信託の具体的事例(Aさんの場合)

ここからは、実際にあった事例に基づいて、家族信託の具体的な利用方法をご紹介していきます。

ご相談者様と専門家の会話を通してご理解頂ければと思います。


※【Aさん】はご相談者様、【専門家】は行政書士や司法書士、弁護士など専門家の言葉です。



1 不動産オーナーの認知症対策


最初の事例は、ご相談者様Aさん(75歳)ご自身で所有されている賃貸マンションを経営されている方の事例です。

Aさんは、今はお元気ですが、ご自身が万が一、認知症になったときの財産の管理について、不安を持たれていらっしゃいました。法的に対策がないか、ということで、ご相談をいただきました。

【Aさん】私は、賃貸アパートを経営しています。 最近物忘れが多くなってきたのですが、もし、私が認知症になったら、アパートに関する契約が、自分に不利なものであっても、正確に判断ができず、契約をしてしまわないか、不安で仕 方ありません。何か、対策はありませんか?


【専門家】Aさん、それは心配ですね。高齢者の方の中には、不利かどうかの判断がつかないばかりか、悪質な詐欺の被害に遭われる方もいらっしゃいます。


【Aさん】詐欺ですか。怖いですね。


【専門家】また、Aさんの場合、万が一、重度の認知症を患ってしまうと、所有しているアパートの管理・運用にかかわるすべての法律行為ができなくなってしまうという問題もあります。


【Aさん】法律行為とは何でしょうか?


【専門家】法律行為とは、具体的には次のような行為をいいます。

■法律行為とは■

☆契約の締結  ☆遺産分割協議への参加  ☆贈与  ☆預金の引き出しの依頼

法律行為ができないと、財産管理という面で数々の支障が生じます。


【Aさん】そういえば、友人のYさんは認知症を患い、遺産分割協議ができなくなってしまったと聞きました。結局は、成年後見制度を利用したそうです。でも、Yさんの息子さんは、成年後見制度はいろいろ面倒だともいっていました。どういうことなのでしょうか?


【専門家】認知症になると法律行為ができなくなるため、それを補うため成年後見制度を利用することがあります。成年後見制度とは、判断能力がないYさんの様な方のために、家庭裁判所が選任した成年後見人が、Yさんを代理して法律行為を行う制度です。この成年後見制度の目的は「成年被後見人(Yさん)の財産の保護」なのですが、一度この制度を利用してしまうと、成年被後見人の利益になることしかできなくなってしまうため、いくつかのデメリットがあります。


【Aさん】どのようなデメリットでしょうか?


【専門家】成年後見人は、毎年、家庭裁判所に対し、財産が成年被後見人(Yさん)のために適切に管理されているか、財産の管理状況について報告する義務があります。家庭裁判所の厳しい監督下にあるため、成年被後見人以外のためにお金を使うことができないのです。たとえば、Yさんの貯金を使って、孫にランドセルを買ってあげるということもできません。Yさんの息子さんがおっしゃった「面倒だ」というのはそのことでしょう。


【Aさん】そうなのですか。成年後見制度のデメリットは、ほかにもありますか?


【専門家】たとえば、Aさんの場合、相続税対策として、余っている土地に、もう一棟アパートを建てることができなくなります。また、Aさんの財産を必要以上に使ってしまうおそれがあるため、豪華な老人ホームへの入居も難しくなるでしょう。


【Aさん】それは、困りますね。今から、対策することはできますか?


【専門家】もちろんです。「家族信託」という言葉をお聞きになったことはありますか?


【Aさん】はじめて聞きます。どのようなものですか?


【専門家】信頼できる家族に対し、財産を託すことのできる制度です。普段頼りにされているご家族はいらっしゃいますか?


【Aさん】長男が頼りになります。成年後見制度を利用するなら、長男に成年後見人をお願いしようと思っていたくらいです。家族信託はどうすればできますか?


【専門家】Aさんがご長男と信託契約を締結します。契約内容は次のような内容がよいでし ょう。

■家族信託契約の内容■

◆委託者Aさん(元々の財産の所有者。) ◆受託者ご長男(財産の管理、処分を行う。)

◆受益者Aさん(財産から経済的な利益= 家賃収入を受け取る。)

◆信託財産Aさん所有のアパート

このような信託契約を締結することで、信託された財産(信託財産) の法律上の所有者は、受託者であるご長男となります。したがって、以後、信託財産に係る契約は受託者であるご長男が行うことになるのです。


【Aさん】長男に管理を任せることができるのですか。


【専門家】そうです。万が一、Aさんが認知症になったとしても、財産管理については、安心できますよね。Aさんの判断能力がしっかりしているうちに、財産の管理、処分方法を契約によって定めておくことができるため、認知症を発症した後でも、Aさんの希望に基づいた財産管理が期待できます。


【Aさん】なるほど。そんな制度があるのですね。でも、長男が財産の所有者になるということは、私から贈与があったことになり、贈与税を払わなければいけなくなりませんか?


【専門家】その心配はありません。信託財産の法律上の所有者は受託者(ご長男)です。しかし、税務上の所有者は、受益者(Aさん)として扱われます。このため、信託前と信託後で、税務上の所有者は変わらないということになります。したがって、Aさんから、ご長男に贈与をしたことにはならず、贈与税は課税されません。


【Aさん】なるほど。でも、長男が所有者になるということは、長男がもし破産したら、私が信託している財産も差し押さえられませんか?


【専門家】その点もご安心ください。信託財産は受託者名義となりますが、受託者の個人的 な財産とは区別して管理されます。例えば、信託財産が不動産である場合には、受託者の固有財産である不動産とは区別するために、不動産登記簿に信託財産である旨の登記がされます。

したがって、万が一、財産の名義人である受託者が破産したとしても、信託財産は差押されません。受託者は交代することになりますが、そのまま信託は続行します。


【Aさん】実際に信託をすると、どうなりますか?


【専門家】現状、Aさんが受け取られている家賃収入は、家族信託契約締結後は、一旦、ご長男が受け取ることとなります。ご長男は、受け取った賃料収入を、家族信託専用の銀行口座(信託口口座)で管理をしていきます。


【Aさん】長男が、家族信託専用の口座で、家賃を管理してくれるのですね。実際に、私にお金が必要になった場合はどうすればよいでしょうか?


【専門家】ご長男が預かっている家賃収入は、最終的に、受益者であるAさんのために使わ れます。生活費等、お金が必要になった際には、ご長男から、Aさんにお金が支払われます。


【Aさん】私が必要とする分以外のお金は、長男が好きに使えることになりますか?


【専門家】いいえ。ご長男は、あくまで財産を預かっているだけなので、信託財産を自由に使うことはできません。信託契約で定める財産の管理方法にしたがって、管理、処分することができるだけです。


【Aさん】なるほど。長男は信頼していますが、勝手に使われたり、不動産を売却されたりするのが心配なので、管理方法をしっかりと定めておきたいです。具体的にはどのような定め方がありますか?


【専門家】金銭については、その用途を定めることが多いです。また、不動産については、売却をすることはできないと定めれば、ご長男の判断で売却をすることはできなくなります。


【Aさん】それは安心ですね。早速、長男に受託者になってくれるよう話をしてきます。


【専門家】契約書の作成や、名義の書き換えの手続きは、サポートさせていただきます。


【Aさん】よろしくお願いします。


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