
長野県松本市で「家族信託」や「遺言書」、「任意後見」など生前の相続対策に特化した取組を行うディアパートナー行政書士事務所です。
非上場株式の事業承継の実例
非上場の中小企業オーナーが保有する自社株式を円滑に事業承継するための手段として、家族信託は大変有効な手法になります。
当事務所は昨年、高齢の非上場中小企業オーナーが保有する自社株(持分70%)を信託財産とした家族信託を手掛けさせていただきました。
後継者である長男は自社株を保有しておらず、株式70%を保有するオーナーが議決権を有している状況でした(残りの株式30%はオーナー妻が保有)。
高齢のオーナーは株式70%を保有していますので、会社にとって重要な事項でさえ採択できる2/3以上の議決権を持っていました。つまりオーナーの判断ひとつで会社の重要事項が決定されるという状況になっていました。
後継者である長男が心配していたのが、高齢のオーナーが認知症などによって意思判断能力が低下また喪失した場合に、会社のかじ取りができなくなるのではないかという懸念でした。30%の株式を保有するオーナー妻は既に認知症で判断能力がなくなっている状態だったことから、とても切実な悩みだったようです。
実質的な会社の運営は長男が行っていましたが、長男は全く議決権を有していない状況でしたので、会社の行く末がとても心配になり、長男から会計事務所に相談されたようです。
会計事務所からお声がけをいただき、会計事務所の税理士先生と一緒に私も長男のお話を聞かせていただきました。
長男が運営する会社は製造業であり、昨今の企業買収スピードの速さなどをみるにつけ、スピディーな経営判断が必要と痛切に感じていたようです。ましてや判断能力が失われてしまえば経営判断を仰ぐこともできなくなります。
会計事務所では以前からオーナーから長男への事業承継を検討していたようですが、株式譲渡や株式贈与、事業承継税制、種類株式発行など、いずれも利用するのが難しい状況でした。
会社業績が堅調であるため、自社株式の評価額が非常に高くなっており、すぐに長男が買取できるような金額ではなく、贈与するとしても多額の贈与税が発生する状況でした。
そのため、事業承継税制の活用や種類株式の発行なども検討したようですが、いずれも要件などでハードルが高く、そのままの状況が続いていました。
オーナーの年齢からみても年々リスクは高まっていましたので、(配当などの経済的利益は別にしても)「なんとか会社の議決権だけは確保したい」という長男の切実なお悩みを解決すべく、私から「自社株式のみを信託財産とした家族信託【株式信託】」をご提案しました。

株式信託のメリット
オーナーを委託者兼受益者、長男を受託者とした「自社株式を信託財産とした家族信託【株式信託】」にした場合、議決権は長男に移りますが、配当を得る権利などの経済的利益はオーナーのままですので、信託しても贈与税は発生しません。
なぜならば、課税対象は経済的利益を有する者になりますが、経済的利益を有する者はオーナーですので贈与税は発生しないことになります。
こうした株式信託にすることで、オーナーが受益者となるため、株式信託後もオーナーが配当金を受け取ることができますし、長男は会社の重要事項の決定権を得ることができ、会社のかじ取りを自身の判断でスピーディーに行うことができるようになりました。
この事案では信託財産は自社株式のみにしました。これは結果的には「信託している事実の非公開化」という観点から非常に良かったと考えております。
というのは、信託財産に不動産が含まれていないため、信託登記を行う必要がなく、外部の者からは株式信託していることを知られる心配もありません。(信託財産に不動産がある場合は信託登記しますので、不動産の登記簿謄本を取得すると第三者でも信託している事実が分かり得ることになります。)
後継者が確定していない場合にも株式信託が有効
この事案では長男がすでに実質的な会社のかじ取りを行っていましたので、今回は考慮する必要はありませんでしたが、後継者が確実に決まっていない場合にも「株式信託」は有効に機能します。
会社の運営を任せたものの運営をみて任せることができないと判断した場合、譲渡や贈与では「やり直すことが非常に困難」になりますが、家族信託を活用した場合には「家族信託を終了する」ことで元の状態にリセットすることが容易にできます。
このほかにも株式信託では、オーナーが正確な判断ができる間は、委託者であるオーナーに指図権(受託者に信託財産の管理・処分等の指図ができる権利)を付与しておくことで、正確な判断ができる間はオーナーが会社の運営に関与できるような設計ができます。
このように家族信託を使って「自社株を株式信託」することで、非上場中小企業の事業承継がとても円滑に実施される可能性があります。

株式信託のご相談はディアパートナー行政書士事務所へ!
家族信託のなかでも「株式信託」は信託法だけでなく会社法の制約を受けることになりますので、地方においてはまだ実例が少ない状況になります。
当事務所では、国内トップクラスの実績を有するトリニティ・テクノロジー株式会社と連携しておりますし、今回ご紹介したとおり長野県内における実績を有しております。
非上場中小企業の事業承継でお悩みのオーナー様、後継者候補様におかれましては、ディアパートナー行政書士事務所へご相談いただくことで、最適な解決先をご一緒に検討していくことができますと思います。お気軽にご相談ください。
ディアパートナー行政書士事務所
電 話:0263-34-6163

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