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  • takizawa62

家族信託の具体的事例(Dさんの場合)


ここからは、実際にあった事例に基づいて、家族信託の具体的な利用方法をご紹介していきます。



ご相談者様と専門家の会話を通してご理解頂ければと思います。




※【Dさん】はご相談者様、【専門家】は行政書士や司法書士、弁護士など専門家の言葉です。



4 浪費癖のある子どもに、現金を贈与したい場合にも使える家族信託

今回の相談者は、Dさん(55歳)です。Dさんは相続税の対策として、暦年贈与(毎年贈与税の課税されない範囲で自分の財産を贈与していく相続税対策の一手法)をお子様に対して行おうと考えていました。


【Dさん】私には、今年成人したばかりの長男がおります。この間、知り合いの税理士の先生から相続税について話を聞く機会があり、自分が死んだときには、結構な相続税が課税されることがわかりました。

自分の死んだ後のことではありますが、やはり、相続税はなるべく払いたくありません。今のうちから相続税節税のための対策を取りたいと考えております。


【専門家】そうですか。具体的に、どのような対策を考えられていますか?


【Dさん】私が元気なうちに、息子に百万円ずつ贈与していこうと考えています。


【専門家】いわゆる暦年贈与とわれる対策方法ですね。毎年一定の金額を、子の世代に贈与しておくことにより、ご本人(被相続人)の財産を予め減額しておくという最もポピュラーな相続税節税対策の一つですね。

毎年の贈与額が百十万円以内であれば、贈与税も課税されませんので問題ありませんね。


【Dさん】そうです。税金の対策はしっかりとできるため、心配はしていません。ただ、毎年長男に贈与した財産を、長男が無駄遣いしてしまわないか心配なのです。


【専門家】なるほど。ご長男は、まだお若いですものね。贈与する財産は、どのようなものがありますか?


【Dさん】私の財産のうち、現金だけを贈与しようと考えています。例えば、暦年贈与するための息子名義の銀行口座を作って、息子が無駄遣いできないように通帳と印鑑を私が管理しておいてもいいのでしょうか?


【専門家】現金を毎年百万円ずつ贈与されるのですね。息子さん名義の銀行口座を作って、通帳と印鑑をDさんが管理することにした場合、残念ながら、相続税対策にはならない可能性が高いです。


【Dさん】どうしてでしょうか?


【専門家】名義預金という言葉を聞いたことはありませんか?現金を贈与したことにして、相続人(長男)名義の銀行口座に預金しておいたとしても、実際には、被相続人(Dさん)が口座を管理していたような場合には、相続税の計算上その口座の預金は、被相続人(Dさん)のものとみなされてしまいます。

せっかく行った贈与が、相続税の計算上は、なかったものとして 扱われてしまうのです。


【Dさん】そうなのですね。やはり、息子には、無駄遣いするなときつく言い聞かせるしかないのでしょうか?


【専門家】いい方法があります。家族信託という制度を利用すれば、ご長男に贈与した金銭 の無駄遣いを防ぐことができます。


【Dさん】家族信託ですか。どのような制度でしょうか?


【専門家】家族信託とは、信託契約という契約を行い、財産を管理する人(受託者)、管理の方法、財産から経済的な利益を受け取る人(受益者)を定めることにより行います。


【Dさん】その制度をどのように利用するのでしょうか?


【専門家】つぎのような家族信託を組成します。

■家族信託契約の内容■

◆委託者Dさん(父) ◆受託者Dさんの妻(又はDさん自身)(財産の管理を行う)

◆受益者ご長男(財産から経済的利益を受け取る)

◆信託財産金銭百万円

◆財産の管理方法受託者は、受益者に対し、受託者が必要と認めた範囲で金銭を払い渡す ものとする。


【専門家】このような契約を締結したうえで、毎年、信託財産として百万円を追加信託していきます。これだけではイメージが持ちづらいと思いますので、一つひとつ説明していきます。


【Dさん】よろしくお願いします。


【専門家】①委託者(いたくしゃ)とは、財産の所有者の方のことをいいます。Dさんの財産を贈与するため、今回はDさんが委託者となります。

この委託者と次に説明する受託者が信託契約を行うことによって、家族信託が開始します。


【Dさん】委託者と受託者が契約をするのですね。


【専門家】そうです。②受託者とは、実際に財産の管理を行う人のことを言います。 ここでは、仮にDさんの奥様を受託者としていますが、Dさん自身が受託者となることもできます。


【Dさん】私が委託者と受託者を兼ねることができるのですか。その場合、自分の財産を自分に信託をするということでしょうか?


【専門家】そのとおりです。すこし違和感があるかも知れませんが、信託した財産は、ご自身の財産とは別々に管理をしていくと考えていただければ結構です。このような、委託者と受託者が同一人物の信託を、自己信託といいます。


【Dさん】なるほど、自分の個人的な財産と信託した財産とを別々に管理するというわけですね。自己信託の場合は、自分一人で信託契約をすればいいのですか?


【専門家】自己信託は、信託契約ではなく、信託宣言というものを行うことにより、開始します。この信託宣言は、公正証書等の書面で行う必要があります。


【Dさん】わかりました。今回はわかりやすく、妻に受託者をお願いしようと思います。


【専門家】そうですか。では、Dさんと奥様で信託契約を締結することになりますね。 次に、③受益者の説明をします。

受益者とは、信託財産から経済的な利益を受け取る人のことをいいます。今回のケースでいうと、受託者に信託された金銭は、ご長男の学費や生活費に 使われますので、受益者はご長男となります。


【Dさん】そうすれば、きちんと相続税対策となりますか?


【専門家】はい。相続税法上は、財産は受益者に帰属していると考えるというルールがあります。したがって、Dさんの現金について、受益者をご長男とした家族信託をすると、Dさんからご長男へ信託財産の贈与がされたこととみなされます。


【Dさん】なるほど、安心しました。私の場合、毎年百万円ずつ贈与しようと考えているのですが、贈与しようとしている金銭は、全部で三千万円あります。最初から三千万円を信託してはいけないのでしょうか?


【専門家】当初から三千万円全額を家族信託してしまうと、三千万円全額の贈与があったものとみなされるため、贈与税が課税されてしまいます。そこで、暦年贈与のごとく、毎年追加で百万円を信託していくようにします。

毎年、百万円ずつであれば、贈与税の非課税枠である百十万円を超えないため、追加信託の場合も暦年贈与同様、贈与税の問題は発生しません。


【Dさん】では、毎年百万円ずつ妻に追加で信託をして行く必要があるわけですね。ちなみに、 妻が財産を管理する上で、なにか気を付けておくべきことはありますか?


【専門家】二つあります。まず一つ目ですが、信託財産は、信託専用の銀行口座(信託口口座)に預金をして管理をするようにしてください。奥様の個人的な財産ときちんと区別することが重要です。


【Dさん】信託専用の銀行口座を開設する必要があるのですね。これは、銀行で日常的な口座を開設する手続きと同様の流れでできるものでしょうか?


【専門家】取り扱いのある金融機関とそうでない金融機関がありますので、あらかじめ口座を開設したい金融機関に確認をしておく必要があります。最近では、多くの融機関で開設が可能になっていますが、実際に開設の手続きをする際には、私がサポートさせていただきますよ。


【Dさん】ありがとうございます。もう一つの気を付けておくべき点は何でしょう?


【専門家】二つ目は、信託契約の内容に沿って、信託財産を管理することが必要である、ということです。受託者の信託財産の管理方法は、信託契約において定めますが、その規定を遵守する必要があります。


【Dさん】なるほど。具体的には、どのような管理方法を定めるのでしょうか?


【専門家】これは、家族信託の契約内容⑤財産の管理方法の説明になりますね。受託者は、この管理方法の定めに沿って、受益者に対して信託された金銭を支払うこととなります。この時に、必要以上に高額な金銭が受益者に支払われると、無駄遣いされる心配が生じるので、必要な金額のみが支払われるよう設計する必要があります。どの程度の金額が受益者の生活に必要なのかについては、多くの信託契約では、その都度受託者の判断に委ねることとしています。

例えば、次のような定め方になります。

『信託された金銭は、受託者が受益者の生活状況を鑑み、相当と認める範囲内において、受益者の生活費等に充てるものとする。』


【Dさん】一度に多額の金額が息子の手元に渡らないようにするわけですね。いっそのこと、 私が生きているうちは、信託したお金は使うことができないように設計することはできますか ?


【専門家】これも、名義預金と同様の問題が発生する可能性があります。信託はされているけれども、受益者のために使うことができない金銭は、そもそも、贈与されていないものとして取り扱われてしまう恐れがあります。


【Dさん】そうですか。無駄遣いをしないのであれば、長男がお金を使う分には問題ありません。このような家族信託を行うと、長男にそのことを知られてしまうものでしょうか?


【専門家】いいえ、必ずしもそうではありません。受益者は、契約の当事者とはなりませんので、受益者に知られずに家族信託を行うことができます。

ただ、多額の贈与を行った場合には、 受益者に贈与税の申告義務が生じますので、実際の問題として、受益者が家族信託の存在を把握する必要が生じます。


【Dさん】なるほど、わかりました。家族信託を行うかどうか、さっそく妻と相談してみます。


【専門家】ぜひ、そうしてください。


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